PROJECT STORY01
事業承継、M&Aと組織再編
M&Aによる事業売却から組織再編まで、
5年間に及んだ事業承継プロジェクト
MISSION 経営者の高齢化と業績不振に直面する企業グループの事業承継
一般的な税務会計業務の枠にとどまらない、青山合同税理士法人の税務コンサルティング業務。その代表例が、青山財産ネットワークス(AZN)と連携して進める事業承継だ。現在はパートナーを務めるT.Kが5年がかりで担当した、ある企業グループの事業承継プロジェクトでは、事業承継から派生したM&Aをはじめ、組織再編・株価評価・事業の譲渡と、多岐にわたる専門性の高い業務が求められた。チームを指揮したT.Kと、若手メンバーT.S、中堅メンバーT.Koそれぞれの視点からプロジェクトを振り返る。
事業承継プロジェクト始動
プロジェクトのスタートは、AZNからの事業承継に関する協業相談だった。ある企業グループX社のオーナーから事業承継のご相談があり、その事業承継コンサルティングを進めるうえで必要となる税務会計領域の協業を、T.Kに相談したのだ。M&Aや事業承継領域を専門分野とするT.Kは快諾し、案件を共に進めるメンバーの人選にとりかかった。とりわけ重視したのは、スピード感をもってプロジェクトを進めることと、プロジェクトでの経験をメンバーの成長につなげることのバランスだった。
「このプロジェクトは、事業承継の対策からはじまり、事業計画書の作成・M&A・組織再編・株価評価・事業の譲渡と、多岐にわたる業務を行う必要がありました。さらにX社の顧問弁護士が主導でプロジェクトを進めることが分かっており、これまでの経験からタイトなスケジュールでの進行になることが予想されたので、それを見越した人選を行いました」(T.K)。幅広い領域の業務を扱うことで得られる経験と、タイトなスケジュールにあわせるプロジェクト進行。これらを両立させるために抜擢されたメンバーが、当時入社2年目の若手社員T.Sと、中途入社して間もないT.Koだった。
税務顧問と並行して進める事業承継
X社の業務は、プロジェクトへの参加とほぼ同時期に決まった税務顧問からはじまった。事業承継を進める中で、通常の税務顧問としても動く必要があるからだ。この顧問業務のメンバーとして抜擢されたのが、当時入社2年目のT.Sだ。「最初は通常の月次決算から入り、徐々にグループ法人税制や組織再編税制などが絡む複雑な申告であったり、法人の解散及び清算に向けた申告書作成までも担当させていただきました。まだ入社2年目でしたので、案件の難易度へのプレッシャーもありましたが、T.Kさんのプロジェクトマネジメントのおかげで、タイトなスケジュールの中でも幅広い決算申告業務を経験することが出来ました」(T.S)。
当時T.KはT.Sの教育を担う立場で、このプロジェクトを難易度の高い業務に挑戦する機会と考えていた。「税務顧問と並行して事業承継を進めるプロジェクトでしたので、T.Sさんには顧問業務を担当いただき、プロジェクトが進む中で事業承継から派生する業務を経験してもらおうという考えです。私は全体の窓口として、AZNメンバーとの事業計画作成や、取締役会での対応に注力していました」(T.K)。この時、X社の経営者側として事業計画を作成していたT.Kは、このプロジェクト最初の壁に直面していた。事業計画について、プロジェクトを主導する弁護士側と、取締役会での意向が一致しない場面が増えてきたのだ。
経営陣の心を動かした取締役会での対応
取締役会の焦点は、業績不振からの経営再建だった。弁護士側は役員として、経営コンサルタントを取締役会に招いていた。T.Kらは事業計画の数字を基に報告する立場だが、経営コンサルタントの再建策に対する経営陣の反発もあり、なかなか意見がまとまらない。経営陣からは自身を置き去りにした議論に不満の声があがる中で、T.Kは丁寧な数字の説明と、仲介役として間を取り持つ役割を心がけていた。その対応が経営陣の心を動かし、徐々に事業計画の数字を基に議論が進むようになる。最終的にはM&Aでの主力事業の売却が決まったが、経営の数字と向き合うことを避けてきた経営陣の変化に、T.Kは手ごたえを感じていた。
M&Aが決まると、そのスケジュール内で株価評価や組織再編を進めなければならない。ここでチームに加わったのが、中途入社して間もないT.Koだ。組織再編に携わることを志望した入社経緯と、税理士業界での豊富な経験に期待しての抜擢だった。「この案件は特に、スピードへの対応が大変でした。弁護士、司法書士やコンサルタントの方と進める案件で、私たち税理士の都合だけを優先できません。T.Kさんのスケジュール管理と、どこまで取り組むべきかを明確にした指示に助けられました」(T.Ko)。T.Koが着実に業務を進め、T.Sが書類を作成し、T.Kが全体を指揮する。3人のチームワークにより、大きなトラブルなくプロジェクトは進行していた。
「お客様のために」を体現したプロジェクト
M&Aによる事業売却はスケジュール通りに進み、その後は残りのグループ企業間での資産の移転や不動産の売却、その後に会社清算などが行われ、最終的には残りの事業を1社に集約することでプロジェクトは完結した。5年に及ぶプロジェクトを指揮したT.Kが振り返る。
「実はX社の社長にはご子息がいらっしゃって、事業承継を検討する中で、本音ではご子息に継いでほしいという想いもお持ちでした。しかし業績が悪化し資金も目減りしていく中で、経営者としての決断もしなければならない。主力事業の売却は望んだ形ではなかったかもしれませんが、従業員は全て引き継いでもらうことができました。プロジェクトの最後に社長から『これで肩の荷がおりました』とお礼の言葉をいただき、この3人のチームでお客様のお役に立てて本当に良かったと思っています」(T.K)。
プロジェクトを経て残った1社は、その社長のご子息が継ぐことになった。税務顧問としてプロジェクトメンバーとの交流も続いており、当時プロジェクトを主導していた弁護士とも相続対策の協業が行われている。青山合同税理士法人の事業承継コンサルティングは、プロジェクトの完結後もお客様と共にあり続ける。